めまいのはなし

Dizziness

 「耳石」の読み方は医学的には「じせき」と読み、文字通り耳の中にある小さな小さな石を示します。
石と言っても炭酸カルシウムの結晶で、ゼラチン様物質でできた網目状の膜の上にたくさん乗った状態でくっ付いています。
耳の役割は音を聞くこと(聴覚)と体のバランスをとること(平衡覚)の二つですが、耳石は後者に関連しています。
耳の平衡覚と言えば三半規管が良く知られていますが、三半規管は文字通りいわゆる3D(前後・左右・上下)に位置する3つの輪で構成されていて、 それぞれの平面における回転加速度を感知します。
これに対して耳石がある部位は前庭と呼ばれ、水平に位置する嚢と垂直に位置する嚢から成り、重力や直線加速度を感知します。
スケートのスピンのような回転運動では三半規管が働きますし、自動車の急速発進や高速エレベーターでは耳石器が働きます。
スリル満点のジェットコースターは直線運動に回転運動も加わるうえに、さらに眼からの刺激なども加わりとても強い刺激になるので、 一部の人にはたまらない遊具になっています。

耳画像

 さて、頭蓋骨骨折や脳内出血といった重篤な状態にならなかった頭部の打撲でも、横になろうと頭を枕につけた瞬間や、 起きようとして上体を起こした瞬間にぐるぐると目がまわることがあります。
このめまいの原因としてひとつに耳石が挙げられます。
正確に言うと本来あるべき前庭から、打撲による衝撃によって剥がれ三半規管に迷い込んだ耳石で、ふらふらと半規管の中を移動したり、 半規管膨大部の感覚器にくっ付いたりして目をまわします。
このようなめまいを「良性発作性頭位めまい症」と言います。
耳から生じるめまいとしてはメニエール病が有名ですが、最も多いのはこのめまいで、実にめまい患者さんの20~40%程度と言われています。

 「良性発作性頭位めまい症」の原因としては頭部打撲以外にも、腰痛や手術後で長期間寝たきりになっていたりした場合もあり、 半数は特に原因がありません。
症状としては布団から起きようとした時、急に景色がグルグルと回りだし、同時に吐き気におそわれますが、じっとしているとめまいは治まり、 また少しでも頭を動かすと回りだすというものです。
この病気を診断するためには、頭や体の位置を変化させることでめまいが起こることを確認することです。
目が回っていると感じているときに、実際眼球が回っているのが観察されます。
目の回っている本人にとっては大変不安で恐怖なため、おもわず悲鳴をあげて目を閉じてしまう人もいますが、 検査中がんばって目を開けていただければ確認できます。
数日から2週間ぐらいでめまいしなくなることが多く、めまいしなくなってからの診察ではこの目の動きが観察できません。
ですから早めに受診されることをお勧めします。

 悪さをしているのは三半規管に迷い込んだ耳石ですので、これをもとあった前庭に戻すことができればめまいは治ります。
この手技を浮遊耳石置換法と言います。
横になって頭を回す方法ですが、やっている間にめまいが誘発されますのでできない人もいます。
三半規管は三つの輪ですから、迷い込んだ輪によって、また迷い込んだ耳石がふらふらしているのか、くっ付いているのかによってもめまいの出方が異なり、 手技も異なります。
再発しやすい特徴もあり、心当たりの人は一度耳鼻科を受診してみてください。

くしゃみ画像